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最終更新: 2026-07-20

方向性運動低下

説明

特定の方向への運動の開始と遂行が選択的に低下する現象である。
半側空間無視の運動成分(premotor factor)にあたる。

決定的な特徴は次の3点である [1]。

  • 方向特異的 — 特定の方向への運動でのみ生じる
  • 視野特異的 — 刺激が提示される視野に依存する
  • 使用する肢によらない — 右手で行っても左手で行っても同じ方向で生じる

3点目により、麻痺や運動無視と区別できる。運動無視が「その肢を使わない」のに対し、
方向性運動低下は「どちらの肢を使っても、ある方向への運動が遅い」となる。

病巣

  • 前頭葉優位
  • 半側空間無視の運動成分として、前頭葉病変で顕在化しやすい

検査

  1. 視野と運動方向を分離した反応時間課題

    • 刺激提示視野と運動方向を独立に操作する
    • 左右の手で同じ課題を行い、肢によらないことを確認
  2. 半側空間無視の標準検査との併用

    • 線分抹消(探索の方向性)
    • BIT 行動性無視検査

分類上の論点

半側空間無視の知覚成分と運動成分は二重乖離する。

Liu らは、右頭頂葉梗塞の症例が視覚・聴覚・触覚の消去現象のみを示し
探索−運動性の無視は軽度であったのに対し、右前頭葉出血の症例は
探索−運動性の半側空間無視のみを示したことを報告した [2]。
これは、方向づけられた注意の皮質ネットワーク内で、
頭頂成分が感覚−表象的側面を、前頭成分が運動−探索的側面を主に担うという
機能分化を支持する。

したがって、半側空間無視の臨床評価では
知覚的な指標と探索・運動的な指標の両方を用いる必要がある。
どちらか一方だけでは、成分の一方を見落とす。

文献

  1. 鳥居方策「運動無視」臨床神経学 1993;33(12):1301-3.(総説。PMID 8174330)
  2. Liu GT, Bolton AK, Price BH, Weintraub S. Dissociated perceptual-sensory and
    exploratory-motor neglect. J Neurol Neurosurg Psychiatry 1992;55(8):701-6.
    (症例報告2例。PMID 1527542 / DOI