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最終更新: 2026-07-20
運動無視
説明
筋力・反射・感覚・協調運動のいずれにも異常がないにもかかわらず、
病巣と反対側の四肢を自発的に使わない状態である [1]。
最大の特徴は著明な可逆性にある。検者が強く促せば患者はその肢を使うことができ、
使えば正常に動く。つまり運動の実行能力ではなく、その肢を用いようとする過程が障害されている [2]。
しばしば次の徴候を伴う。
- placing reaction(置き直し反応)の異常
- 疼痛刺激に対する自動的逃避反応の欠如
- 動作の完了不全(hypometria)
腫瘍が原因のことが多く、症状が一過性にとどまる傾向がある。
病巣
- 前頭葉
- 頭頂葉
- 視床
Laplane と Degos は前頭・頭頂・視床病変による20例を報告し、
運動無視に関与する脳構造は感覚性無視および運動の準備に関わる構造と同一であり、
関与する構造が多岐にわたることは、十分な活動水準を保つために
これらの相互連絡が必要であることを示唆する、と論じた [1]。
検査
行動観察
- 自発的な使用頻度の左右差
- 促した際の改善の有無(これが診断の要)
神経学的診察
- placing reaction
- 疼痛刺激への逃避反応
- 筋力・反射・感覚が正常であることの確認(除外が必須)
分類上の論点
運動無視と方向性運動低下は別の現象である。
半側空間無視は単一の症候ではなく、知覚成分と運動成分に分けられることが知られているが、
両者を実際に切り分けるのは長らく困難であった。
鳥居の総説によれば、方向性運動低下は方向特異的かつ視野特異的で、使用する肢によらないのに対し、
運動無視は大脳半球優位性によらず出現する点で性質が異なる [3]。
左右差の解釈にも議論がある。 Laplane と Degos は右半球病変による左側の無視が優位であることから、
左半球が意図的活動について優位であり、この半球優位性は感覚性無視にも適用できる
(意識的な気づきが意図的活動の役割を果たす)と提案した [1]。