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最終更新: 2026-07-20

表象無視

説明

外界からの視覚入力がないにもかかわらず、
心のなかに思い浮かべた像(表象)についても一側が脱落する現象である。

Bisiach と Luzzatti が報告したミラノ大聖堂課題が古典的な実証である [1]。
左半側空間無視の患者2名に、よく知っている広場の情景を心のなかで思い浮かべて
描写させたところ、思い浮かべた視点から見て左側の細部が大きく欠落した
さらに、広場の反対側に立った視点を想像させると、
今度はその視点から見て左側(=最初に述べられた側)が脱落した [1, 2]。

これは「今そこにある刺激への注意配分」だけでは説明できず、
無視が空間表象そのものの水準で生じていることを示す。

病巣

  • 右半球(頭頂葉を中心とする)
  • 通常の半側空間無視と重なるが、両者は解離することがある

検査

  1. 表象課題

    • よく知っている場所を2つの視点から描写させる(ミラノ大聖堂課題)
    • 日本語圏では「自宅から駅までの道順」など馴染みのある空間で代用する
  2. 表象二等分課題

    • 線分を提示し、左端を手がかりとして触れさせた後に線分を消し、
      何もない画面上で主観的中点を指させる

分類上の論点

表象無視の存在は、半側空間無視を「注意の障害」と呼ぶことへの主要な反証として使われてきた。

石合らは表象二等分課題を開発し、左端に手がかりを与えた後の線分二等分で生じる右方偏倚が
「物理的な線分の右セグメントへの過剰な注意」では説明できないことを示した [3]。
手がかり提示の時点、あるいは線分全体を見た時点で形成された心的表象に対して
無視が生じている、という結論である。

一方で、プリズム順応が表象無視をも改善するという報告があり、
Rode らはプリズム順応が感覚運動水準だけでなく
「心的空間表象という、より高次の認知水準」にも作用しうると解釈している [4]。
この所見は、表象と注意を截然と分ける見方を弱める方向に働く。

表象無視を独立項目として立てているのは、この論争の所在を可視化するためである。
半側空間無視の項目も併せて参照されたい。

文献

  1. Bisiach E, Luzzatti C. Unilateral neglect of representational space. Cortex 1978;14(1):129-33.
    (原著、症例2例。PMID 16295118 / DOI
  2. Bisiach E, Luzzatti C, Perani D. Unilateral neglect, representational schema and
    consciousness. Brain 1979;102(3):609-18.(PMID 497807 /
    DOI
  3. Ishiai S, Koyama Y, Seki K, Izawa M. Line versus representational bisections in
    unilateral spatial neglect. J Neurol Neurosurg Psychiatry 2000;69(6):745-50.
    (原著、患者8例。PMID 11080226 /
    DOI
  4. Rode G, Rossetti Y, Boisson D. Prism adaptation improves representational neglect.
    Neuropsychologia 2001;39(11):1250-4.(症例2例。PMID 11527562 /
    DOI