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保続
説明
一度始めた行動や反応を、状況が変わっても適切に切り替えられず、同じ行動や反応を繰り返してしまう症候である。運動保続(同じ動作の反復)、言語保続(同じ語の反復)、観念保続(同じ考えの反復)などの形態があり、新しい状況への適応が困難になる。
保続は単一の現象ではない。Albert と Sandson は、現れ方の異なる複数の型を区別することを提唱した [1]。とくに古典的なのが再帰性保続(recurrent perseveration)と持続性保続(continuous perseveration)の区別である。前者は、いったん終わった反応が時間をおいて後の課題に不適切に再出現するもので、たとえば先に呼称した物品の名前が、別の物品を呼称する場面で出てきてしまう。後者は、進行中の行為が終点を越えて途切れずに続くもので、図形の模写で線をなぞり続ける、同じ動作を止められない、といった形をとる。この二つは病巣も背景病態も異なるため、「保続あり」とだけ記載すると情報が失われる。
保続を評価するときは、どの型か、どの様式(言語・運動・描画)で出るか、そして先行反応からどれくらいの間隔をおいて出るかを記録する。とくに再帰性保続では、直前の反応が出るのか、数試行前の反応が出るのかによって示唆される機序が変わる。
病巣
- 前頭葉、前頭前野(背外側部)
- 補足運動野
- 左半球後方(側頭葉・頭頂葉):失語を伴う再帰性保続に関連する [1]
- 右半球病変:持続性保続が主となる [1]
- 基底核と前頭葉-皮質下回路
検査
保続の型と様式の記録
- 再帰性保続か持続性保続か
- 出現する様式(呼称、書字、描画、動作)
- 先行反応からの間隔
神経心理検査
- WCST(ウィスコンシンカード分類検査):概念の転換の障害と保続的誤りの評価
- 図形の模写・系列図形の描画
- 語想起(語頭音流暢性・意味カテゴリー流暢性)
- 交互運動・系列動作の課題
言語機能の評価(再帰性保続では必須)
- 呼称、復唱、聴覚的理解
- 流暢性の評価
- 失語の有無と型の確認
行動観察
- 日常生活場面での保続的行動
- 課題遂行中の切り替えの様子
分類上の論点
「保続は前頭葉性の遂行機能障害の徴候である」という理解は、少なくとも一律には成り立たない。
Albert と Sandson は失語における保続を検討し、再帰性保続が失語と本質的に結びついていること、とりわけ後方病巣による流暢性失語で顕著であることを示した。一方、右半球病巣の患者では持続性保続が主であった [1]。つまり、保続の型は病巣の前後・左右と対応しており、保続一般を前頭葉に帰することはできない。臨床的な含意は明確で、再帰性保続を認めたら、まず言語機能を評価すべきであるということになる。
保続は分類上、少なくとも三箇所にまたがる。
- 遂行機能:概念の転換(set-shifting)の障害としての保続。WCST の保続的誤りがこれにあたる
- 言語:失語に伴う再帰性保続。語彙の選択・抑制の障害として理解される
- 行政的な「社会的行動障害」の⑤固執:高次脳機能障害診断基準に列挙されている項目
このうち三番目は行政上の分類であり、症候としての帰属先は一番目か二番目である。行政カテゴリと学術的な症候分類が一対一に対応しないことについては、脱抑制の項に置いた対応表を参照されたい。
したがって、記録に残すべきは「保続」という語ではなく、どの型がどの様式で出たかである。 型を書き分けておけば、後から病巣を推定する際にも、介入を設計する際にも使える。
文献
- Albert ML, Sandson J. Perseveration in aphasia. Cortex 1986;22(1):103-15.
(原著。PMID 2423294 / DOI)