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最終更新: 2026-07-20
超皮質性運動失語
説明
発話の開始と維持が困難で自発話が乏しくなる一方、復唱は良好に保たれる失語症。
聴覚的理解も比較的良好で、この「非流暢・理解良好・復唱良好」の組み合わせが型を決める。
自分から話し始めることができないのに、検者の言った文をそのまま繰り返すことはできる、
という解離が臨床的な手がかりになる。促されれば単語は出るが、
話題を自分で展開することができない、という形で現れる。
反響言語(エコラリア、相手の言葉をそのまま繰り返してしまう現象)を伴うことがある。
古典的には、Broca野そのものは保たれ、その前方・上方の補足運動野や前頭葉内側面、
あるいはBroca野を取り囲む分水嶺領域が損なわれることで、
言語の発動を担う領域が言語野から切り離されて生じると説明されてきた。
初発脳卒中による失語60例の連続例では、超皮質性運動失語は13.3%を占め、
全失語・Broca失語に次いで3番目に多い型であった [1]。教科書的な印象よりも稀ではない。
病巣
- 左前頭葉、Broca野の前方・上方(Broca野そのものは保たれる)
- 補足運動野・前頭葉内側面
- 前大脳動脈と中大脳動脈の間の前方分水嶺領域
- 左前頭葉皮質下白質
検査
標準失語症検査(SLTA)
WAB失語症検査
発話の発動性に着目した観察
- 自発話の量と開始の遅れ
- 復唱と自発話の乖離の確認
- 語想起(語頭音/意味カテゴリ)
- 反響言語・補完現象(決まり文句の続きを言ってしまう)の有無
分類上の論点
古典的分類は臨床の共通語として有用であるが、病巣の推定には信頼できない。
初発脳卒中失語60例の検討では、伝統的分類による型と病巣の対応が明確だったのは
35%にとどまり、著者らは「病巣部位と失語型のあいだに絶対的な対応は存在しない」と
結論している [1]。Bunker & Hillis は、この予測力と変動性の両方を説明する枠組みとして、
失語型を特定の動脈の灌流域の障害による症候の集合、すなわち血管症候群として
捉え直すことを提案している [2]。
文献
- Bohra V, Khwaja GA, Jain S, Duggal A, Ghuge VV, Srivastava A.
Clinicoanatomical correlation in stroke related aphasia.
Ann Indian Acad Neurol 2015;18(4):424-9.(原著、初発脳卒中失語60例。PMID 26713015 /
DOI) - Bunker LD, Hillis AE. Vascular syndromes: Revisiting classification of poststroke aphasia.
Handb Clin Neurol 2022;185:37-55.(総説。PMID 35078609 /
DOI)