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最終更新: 2026-07-20

失運動視

説明

視覚のうち「動き」の知覚だけが選択的に失われる症候である。形も色も分かり、静止した対象は問題なく見えているのに、動いている対象の動きが捉えられない。きわめて稀な症候で、報告例は限られている。

現れ方には二つの型が記載されている [1, 2]。一つは cinematographic vision と呼ばれるもので、連続した動きが滑らかにつながらず、映画のコマ送りのように断続した静止像の連なりとして見える状態である。もう一つは動いている対象そのものが見えなくなる型である。責任病巣としては後頭頭頂領域の MT/V5野(動きの処理に特化した視覚領野)の機能不全が想定されている [1, 2]。

日常生活への影響は重大になりうるものである。運転中に発症した症例では、左側に駐車していた車が前方へ動いているように見え、止まっていると気づいた時には停止が間に合わず衝突している。MRI で右側頭頭頂領域に MT/V5野を含む新鮮梗塞が確認され、cinematographic vision が事故の原因と考察された(症例報告1例)[3]。動きの知覚は静止視力の検査では捉えられないため、本人が「見えている」と述べていても運転や横断の可否を評価するには別途の確認が要る。

病巣

  • MT/V5野(後頭頭頂領域)
  • 側頭頭頂領域の病変(一側でも生じうる)

検査

  1. 運動視の評価

    • 動く視標の検出と方向の判断
    • 速度の弁別
    • ランダムドットによる運動方向の判断
  2. 他の視覚機能との対比

    • 静止視力・視野
    • 色覚
    • 形態視・物体認知
  3. 日常場面での確認

    • 流れる液体、歩行する人物など動きのある場面での訴えの聴取
    • 運転・横断など動体の判断を要する場面での安全性の評価

文献

  1. Ardila A. Some Unusual Neuropsychological Syndromes: Somatoparaphrenia, Akinetopsia,
    Reduplicative Paramnesia, Autotopagnosia. Arch Clin Neuropsychol 2016;31(5):456-64.
    (総説。PMID 27193360 / DOI
  2. Martinaud O. Visual agnosia and focal brain injury. Rev Neurol (Paris) 2017;173(7-8):451-460.
    (総説。PMID 28843416 / DOI
  3. Maeda K. Akinetopsia on Driving. J Stroke Cerebrovasc Dis 2019;28(7):e102-e103.
    (症例報告1例。PMID 31036340 /
    DOI