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最終更新: 2026-07-20

Anton症候群

説明

皮質盲でありながら、自身の視覚障害を否認する状態である。
視覚が失われているにもかかわらず「見えている」と主張し、
見えたはずのものを作話的に語る。

現代的には次の3徴で定義される [1]。

  • 皮質盲
  • 視覚性病態失認(視覚障害の無自覚)
  • 視覚性作話

前視路(網膜から外側膝状体まで)は保たれているため、対光反射は残る。
歩き回って物にぶつかりながら「暗いから」「眼鏡がないから」と説明する、
といった形で気づかれることがある。

原因は両側後頭葉梗塞が代表的だが [1]、脳出血、可逆性後頭葉白質脳症、
脳底動脈領域の脳卒中、低酸素後の遅発性白質脳症 [2]、感染症など多様である。

病巣

  • 両側後頭葉(一次視覚野およびその近傍)[1]
  • 前視路は保たれる

検査

  1. 視覚機能検査

    • 視力・視野
    • 対光反射(保たれることの確認)
    • 視性眼振の消失
  2. 病識の評価

    • 視覚障害の自覚に関する問診
    • 実際の行動との乖離の観察
  3. 作話の評価

分類上の論点

Anton症候群は病態失認の下位型であり、両者は同列に並ぶ概念ではない。

歴史的な経緯がそれを示している [3]。
Anton(1899)が、皮質聾および皮質盲の患者における「障害の無自覚」を、
神経学的欠損そのものとは独立した症候として初めて概念化した。

これを受けて Babinski(1914)が、まさに Anton の概念化したその臨床実体を指すために
「anosognosia(病態失認)」という語を造語し
、さらに皮質聾・皮質盲の無自覚から
片麻痺の無自覚へと概念を拡張した [3]。

つまり Anton症候群は、病態失認という概念の起源そのものである。
このデータベースでは病態失認を上位項目とし、Anton症候群をその下位型
(皮質盲に対する病態失認)として位置づけている。
病態失認の項も併せて参照されたい。

文献

  1. Mankoo D. Anton syndrome with bilateral occipital infarct: A case report.
    Radiol Case Rep 2023;18(12):4461-4464.(症例報告。PMID 37860783 /
    DOI
  2. Cardona Quiñones RA, Salem Hernández SA, Sekimitsu S, Antongiorgi Torres J, Yerstein O,
    Safar LT. A neuropsychiatric case of delayed post-hypoxic leukoencephalopathy from opioid
    intoxication resulting in Anton-Babinski syndrome and quadriplegia. Neurocase
    2024;29(5):160-166.(症例報告。PMID 38713498 /
    DOI
  3. Gainotti G. History of Anosognosia. Front Neurol Neurosci 2019;44:75-82.
    (史的総説。PMID 31220837 / DOI