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最終更新: 2026-07-20

開眼失行

説明

眼輪筋の明らかな収縮を伴わずに、眼瞼を挙上できなくなる運動障害である。
眼瞼下垂とは異なり、上眼瞼挙筋の麻痺や神経筋接合部の障害では説明できない。
また眼瞼痙攣とも異なり、閉瞼を強制する筋収縮が見て取れない。
患者は開眼しようとして額の前頭筋を強く収縮させたり、
指で瞼を持ち上げたりする代償動作を示す。

「失行」という名がついているが、
古典的な意味での行為の障害というよりは、基底核系の運動障害として扱われる。

単独で生じることも、眼瞼痙攣に合併することもある。
Ferrazzano らの重症度評価尺度の開発研究では、
対象20例のうち単独例が9例、眼瞼痙攣合併例が11例であった [1]。

Parkinson 病では、レボドパとの関連が繰り返し指摘されてきたが、
ドパミン作動性治療が開眼失行に対してどう働くかは、なお論争がある。
片岡らは、Parkinson 病に開眼失行を伴う2例が
レボドパ・カルビドパ経腸ゲル(LCIG)持続投与に対して逆の反応を示したと報告している [2]。
1例では LCIG 導入後に開眼失行が悪化し、中止後に開眼能力が改善した。
もう1例では LCIG 導入前から開眼失行があり、
治療によって自然に眼瞼が挙上するようになった。
著者らは、この違いは治療中の脳内ドパミン濃度の変動によるのではないかと推測し、
開眼失行が LCIG の適応を判断するうえで重要な症状となりうると論じている。
ただしこれは2例の報告であり、一般化はできない。

病巣

  • 基底核
  • 前頭葉(前頭葉へ投射するドパミン作動性ニューロンの機能障害との関連が指摘されている)
  • Parkinson 病、進行性核上性麻痺などの錐体外路疾患に伴うことが多い
  • 特定の限局病巣として確立された対応づけは、今回の調査では確認できていない

検査

  1. 開瞼の観察

    • 閉眼後に自発的に開眼できるか
    • 眼輪筋の収縮の有無(眼瞼痙攣との鑑別の要点)
    • 前頭筋の代償的収縮、指による挙上などの代償動作
    • 症状の持続時間と日内変動
  2. 鑑別のための評価

    • 上眼瞼挙筋の機能(眼瞼下垂の除外)
    • 動眼神経麻痺・重症筋無力症の除外
    • 眼瞼痙攣の有無と重症度
  3. 重症度評価

    • Ferrazzano らによる開眼失行重症度評価尺度。
      20例(単独9例、眼瞼痙攣合併11例)で妥当性が検討され、
      信頼性・内的一貫性・変化に対する感度が許容範囲であり、
      床効果・天井効果を認めず、眼瞼痙攣重症度尺度とは相関しなかった。
      簡単な訓練を受けた一般神経内科医が実施できるとされる [1]
  4. 錐体外路症状の評価

    • パーキンソニズムの有無
    • ドパミン作動薬との時間的関係(服用時間との関連、on-off との関係)

文献

  1. Ferrazzano G, Muroni A, Conte A, Ercoli T, Tamburini G, Fabbrini G, et al.
    Development of a Clinical Rating Scale for the Severity of Apraxia of
    Eyelid Opening, Either Isolated or Associated with Blepharospasm.
    Mov Disord Clin Pract 2020;7(8):950-954.(原著、尺度開発・検証、20例。PMID 33163566 /
    DOI
  2. Kataoka H, Sawada Y, Shimozato N, Inatomi S, Iguchi N, Yoshiji H, et al.
    Apraxia of eyelid opening might be critical for levodopa-carbidopa intestinal gel treatment.
    Clin Park Relat Disord 2020;3:100073.(症例報告、Parkinson 病2例。PMID 34316652 /
    DOI