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最終更新: 2026-07-20
概念失行
説明
行為の知識の側が障害される失行である。
行為のモデルは大きく2つの成分に分けて考えられてきた。
ひとつは道具使用の知識と力学的知識を含む行為概念システム、
もうひとつは熟練した運動を組み立てる情報を含む行為産生システムである。
概念失行は前者、すなわち行為概念システムの障害を指す。
障害される知識は次のように整理される。
- 連合的知識 — 道具と動作の連合(ハンマーなら叩く)、
道具と対象の連合(ハンマーなら釘) - 力学的知識 — 道具がもたらす力学的な利点の理解、
適切な道具の選択、新しい道具を工夫して力学的問題を解決する能力
臨床的には、道具を正しく持てているのに用途の違う対象に使ってしまう、
目的に合わない道具を選ぶ、といった誤りとして現れる。
重要なのは、概念失行が観念運動失行や言語障害と乖離しうることである。
Ochipa らは probable Alzheimer 病32例と対照32例を検討し、
Alzheimer 病群を観念運動失行の有無と語彙—意味障害の有無で4群に分けたところ、
4群のいずれもが少なくとも一部の概念失行の指標で対照と異なった [1]。
著者らは、行為概念システムの障害は言語障害や観念運動失行に直接還元されないと
結論している。
すなわち、道具についての知識(行為意味論)は、
言語的意味とも運動表象とも独立に存在しうる、ということである。
病巣
Heilman らは、右利きの一側性脳卒中29例(左半球病変で観念運動失行なし10例、
左半球病変で観念運動失行あり11例、右半球病変対照8例、健常対照10例)に
概念失行の検査を行った [2]。群間に有意差があり、
左半球病変で観念運動失行を伴う群が、連合的知識・力学的知識のいずれの検査でも
最も強く障害されていた。連合的知識と力学的知識が乖離する傾向も認められている。
- 左半球(行為概念の表象は左半球に蓄えられていると考えられる)
- 左半球内のどこに蓄えられているかは、病巣部位の解析では同定されていない。
この点は未解決である。 - Alzheimer 病など、皮質の広範な変性を来す疾患でも生じる。
検査
概念的知識の検査
- 道具と動作の連合の判断
- 道具と対象の連合の判断
- 代替道具の選択(力学的知識)
- 力学的問題の解決(新しい道具を作って課題を解く)
Florida Action Recall Test(FLART)
- 概念失行を評価するために開発された検査
- 物や場面を描いた45枚の線画を提示し、
適切な道具を思い浮かべてその使用をパントマイムで示させる - probable Alzheimer 病12例と年齢・教育年数を合わせた対照21例の検討では、
Alzheimer 病12例中9例が概念的正確性で2標準偏差の基準を下回り、
基準を上回った3例も遂行時間が2標準偏差を超えていた。
早期 Alzheimer 病の概念失行に感度が高いとされる [3]
他の失行との乖離を確かめる評価
- 観念運動失行の検査(動作模倣、道具使用のパントマイム)
- 言語機能の評価(語彙—意味障害の有無)
文献
- Ochipa C, Rothi LJ, Heilman KM. Conceptual apraxia in Alzheimer's disease.
Brain 1992;115(Pt 4):1061-71.(原著、probable Alzheimer 病32例・対照32例。
PMID 1393502 / DOI) - Heilman KM, Maher LM, Greenwald ML, Rothi LJ. Conceptual apraxia from lateralized lesions.
Neurology 1997;49(2):457-64.(原著、一側性脳卒中29例+健常対照10例。PMID 9270577 /
DOI) - Schwartz RL, Adair JC, Raymer AM, Williamson DJ, Crosson B, Rothi LJ, et al.
Conceptual apraxia in probable Alzheimer's disease as demonstrated by
the Florida Action Recall Test.
J Int Neuropsychol Soc 2000;6(3):265-70.(原著、probable Alzheimer 病12例・対照21例。
PMID 10824498 / DOI)